今、求められる社会人基礎力

 

株式会社日立製作所 家次 晃 株式会社リンクアンドモチベーション小笹 芳央 まず飛び込んでみよう!そこから求められることが見えてくる

「社会人基礎力」対談の第一回は、ゲストに(株)日立製作所 人材戦略室 採用グループ 部長の家次晃 氏が登場。採用の現場から、今、社会で求められている人材について、(株)リンクアンドモチベーションの小笹芳央 氏と大いに語り合ってもらった。

 

氾濫する情報に流される学生たち

小笹:「社会人基礎力」をテーマにした各界の方々との対談企画で、第一回は日立製作所の家次さんにご登場いただきました。最初に、最近の学生について感じることから、ご意見いただけますか。


家次:大きく二つに分かれます。一つめは、非常にアグレッシブで、自分から行動しようとする人たち。もう一つは、氾濫する情報に踊らされ、流されてしまっている人たち。その比率を考えると、流されている人たちの方が断然多くなってきています。就職をするという場面で言えば「僕はどこへ行けばいいんでしょうか」と聞いてくる学生さんもいます(笑)。

小笹:その傾向には何か、特徴はありますか?

家次:類型化できるようなものは、何もないですね。学校別でみても昔は大学のカラーがありましたが、今はほとんど個人レベルになってきています。

小笹:ところで、日立製作所さんが採用選考段階で重視しているポイントは?

家次:まず、自分で考えて行動し、成果を出すことが出来る人。それから勝つことを知っている人。逆に言えば負けることも知っているわけで、負けたところから何かを学んでいるはず。そして、常に新しいことにチャレンジしていく人。さらに、組織で動く限りチームをリード出来る人。最後に、人を愛することの出来る人です。仲間に対してもお客さんに対しても、周りの人を好きにならないと、その人が何を望んでいるかわからない。つまりニーズにあったサービスができない。他者理解がポイントとなります。

 

face to faceの対話で事業理解を深める工夫

小笹:学生さんに自社の事業を理解していただくために、近年新しい取り組みをされているようですね。

家次:入社3、4年目の若手社員が中心となって、就職セミナーに参加して、自分の仕事を自分の言葉で学生に直に伝えるということをやっています。「10万人の学生さんに会いましょう」と銘打って、社員2,000人が会いますという活動を展開中です。そこで、日立製作所の本当の姿を伝えた上で「求める人物像」を説明しています。つまり、「本当の日立」に魅力を感じた方に来ていただきたいと考えているのです。

小笹:今、学生さんからの支持率が高くなっている要因の一つは、それだけのエネルギーを使って学生とコミュニケーションする機会を作っているからでしょうね。

家次:情報メディア社会ですが、学生は就職という一点に絞れば、相当情報に餓えています。やはり重要なのは一人ひとりと対話することだと思っています。

 

高学力=社会で活躍する公式は成り立たなくなっている

小笹:私も家次さんも経済産業省の「社会人基礎力」委員会メンバーだったわけですが、社会人基礎力が問われるようになった時代背景を考えると、企業と学校、その両方が良かれと思ってそれぞれが努力していても、両方の世界をつなぐ共通言語がなかったということが挙げられますね。

家次:それに加えて、バブル崩壊以降、欧米型ビジネスモデルが随分もてはやされてきましたが、企業の実態としては、必ずしもそれがベストではないことがわかってきたこともあります。

小笹:結局、右肩上がりの時代は、何をやるかが明確だった。ところが、これからは何をやるか、そのものを作り上げていかなくてはならなくなった。そうすると欧米追随的なモノマネのビジネスモデルではダメで、各企業がクリエイティビティを発揮していかなくてはならない。そういうことが求められる世の中では、高い学力=産業界で活躍するという単純な公式が成り立たなくなってきたんでしょうね。

家次:そこで学力はもちろん必要だけれど、それとは別に社会人基礎力が必要になってきています。教育の現場と産業界が協力し合いながら、努力のベクトルを合わせていくことで、日本を根底から支える人たちになってもらいたい。すでに各学校では社会人基礎力をつけるために、どういうことをすればいいか、という動きが出てきています。

小笹:人的資源しかない国において、これは急務ですね。

 

自ら飛び込んで本気でやれば新しいモノサシが出来る

小笹:社会人基礎力が広く普及していくためには、これから先、どのように展開していくか、ということで言うと、一つは言葉だけではなくて測定方法を確立すること。もう一つは開発方法の確立です。今、弊社では学力ではなくビジネスの世界で使える適性テストを開発していて、そこには脳のシワ=合理力と感情のシワ=情理力、その両方が測定できるものを開発しています。

家次:まさにIQとEQですね。日立製作所が求める人材の「人を愛することが出来る人財」は、まさにEQの部分。「大学で何をやりましたか」と尋ねると、同種の既存サークルがあるにもかかわらず、「新しいサークルを立ち上げた」という人が増えてきている。つまり、人の輪の中に入って、心のシワを呼びに行こうとしていない人が増えつつある。

小笹:アルバイトにしろ、サークルにしろ、人のことを愛しながら本気で行動していくことが大切。そうすれば他者とつながりを持つことによって、信頼を育む経験が出来るはずです。

家次: 内定者には、たくさんのモノサシを持ってください、と話しています。基準は立場によって変わるものなので、人との関わりにおいて相手の事を考えることで、様々なモノサシを持つことができます。例えば、インターンシップをやれば、お客様、上司、そして直接の指導者と少なくとも三つのモノサシが出来る。モノサシを水平展開すれば、さらにそれが広がっていく。それには自分から飛び込んで、本気でいろいろな経験を積むこと、それが心のシワを増やすことにつながるのです。

プロフィール
株式会社日立製作所 人材戦略室 採用グループ 部長 家次 晃 氏
  • 株式会社日立製作所
  • 人材戦略室
  • 採用グループ 部長
  • 家次 晃

1960年生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、(株)日立製作所入社。入社後、一貫して人事勤労部門に所属し、現在、採用関連業務を担当。「仕事の基本は人との会話」をモットーに、現在、より多くの学生との直接会話を実施。「社員は財(たから)」との信念から、多くの社員の協力を得て、(株)日立製作所の魅力を伝えている。

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役 小笹 芳央 氏
  • 株式会社リンクアンドモチベーション
  • 代表取締役社長
  • 小笹 芳央

1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員。2000年(株)リンクアンドモチベーション設立。同社代表取締役社長。

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった、私たちが職場や地域社会で働く上で必要な力のことをいいます。IT化やサービス経済化等が進む中、こうした力はますます重視されてきています。

 

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