今、求められる社会人基礎力

 

トヨタ自動車株式会社 白野 哲  株式会社リンクアンドモチベーション小笹 芳央 目的と目標を意識することが大事

第二回は、トヨタ自動車(株)人材開発部 採用・計画室長の白野哲 氏がゲスト。採用の現場で感じること、トヨタ自動車(株)の求める人材像を中心に、学生の今だから経験してほしいこと、考えてほしいことを、(株)リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏に聞いていただいた。

 

就職は受験の延長ではなくライフステージの変換だ

小笹:採用の現場で仕事をされていて、最近の学生さんにどのような印象をお持ちですか?
白野:一番感じるのは、非常に優秀で自己学習意欲が高いということです。教育環境や経済環境、情報量の影響があるかもしれませんが、学生時代に大学の勉強以外に、例えば語学や資格取得など、何か一つのことをやりたいという意欲を持っている人が多いですね。他方、「試験科目は何ですか」と質問してくる人が多くて驚きました。もっと他に聞くことがあるはずなのにと思いますね。

小笹:就職を受験の延長線上に考えているんでしょうね。就職は企業と自分がお互いに存分に理解しあって決めるというより、あくまでも受け身で、受験スタンスで臨んでいる。

白野:就職=社会人になることを、ライフステージの変換とはとらえていないんですね。かつては「就職するというのは、どういうものか」がもっと身近なところにあったのに、60年代から90年代の間に、大きく家庭構造が変化し地域コミュニティも喪失しました。それによって、上下の世代間の情報が途切れていて、自分の経験だけで就職をとらえているのではないか、と思います。

小笹:若い人たちが世代を超えて縦とか斜めの関係を取り結ぶ機会がなくなってきている。確かに、同世代でしかも趣味が同じ人だけとか、少し小さなコミュニティに留まっているように感じますね。

白野:非常に自己成長、実現意欲が高いにも関わらず、その先にある企業と個人の関わりとか、企業に入って自分がどんな役割を担い、そのなかでどのような関係を構築していくのかわからずに思考停止してしまっている。そこに危うさを感じます。

 

「なぜ」を5回繰り返して目的と目標を意識しよう。

小笹:社会人基礎力を構成する三大能力として、「前に踏み出す力」「チームで働く力」「考え抜く力」が挙げられていますが、トヨタ自動車ではどのようなポイントを重視して、 選考段階で学生さんと向き合っていますか?

白野:トヨタ自動車では、全世界のトヨタ自動車の従業員が共有する価値観を「トヨタウェイ」として提唱しています。トヨタウェイは、「知恵と改善」「人間性尊重」の2本柱から成り立ち、「チャレンジ」「改善」「現地現物」「尊重」「チームワーク」の5つをキーワードに分けています。これは、社会人基礎力で言われているものと近いですね。様々な利害が絡むなか、どのように仕事を進めていけるか、どのように人間関係を構築していけるのか、そこを見ていますね。トヨタは物事の要因をしっかり追求する会社ですから、「なぜ」を5回繰り返せと言うことをよく言います。学生さんがプレゼンしている中に、20代で社員が伸びていくための要素がどれくらい入ってくるかを重視します。

小笹:社会人基礎力で挙げられているような力を身に付けるには、学生生活の中でどのようなことに心がければ良いでしょうか。

白野:どんなことをやるにせよ、目的と目標を意識して取り組むことが大切です。自分は何のためにやっているのか、どこまでやり遂げればいいのかを冷静に考えると本当に自分のやりたいこと、目的がクリアになってきます。それを繰り返していくと、自分の潜在能力を高めるような、フィードバックがどこかに必ずあるはずです。

小笹:行動している自分とそれをもう一人の自分が見ることが大事ですね。ただなんとなく自然に過ごしてしまって、客観的に見ることができないというのはかなり危険ですね。

 

「何のために働くのか」をじっくり考える機会に

小笹:弊社では、学生さんに対して気づきの機会を提供しようと、2,000人くらいを対象にセミナーを開催しています。そこで敢えて、「社会人になったら不自由だよ」というところから話を始めています。不自由だけれど、一つひとつの役割に向き合い、成果を出していく中で、信頼が集まり実力がついてくると少しずつ不自由さから解放されていく。最近の学生さんは、短いサイクルで物事を見がちなので、今、楽しいことがいいとなってしまう。自らの価値観、仕事観、人間観などをしっかりすり合わせていかずに、人気企業ランキングで選択をして入社してしまうといった、ミスマッチが起きてしまいます。

白野:学生さんには就職活動を機に、「何のために働くのか」ということを一度、じっくり考えてほしいと思います。企業研究ではなく、私たちが発信する企業の価値観を理解した上で、納得してから応募してほしいですね。

小笹:相当な応募数があると思いますが、どれくらいの学生さんと会われますか?

白野:事務系のみで数百名の方と会います。その前段階となると1,000名を超える規模となります。学校名を不問にして、できる限り門戸を広げ、その中で社会に出てから発揮できるような能力を潜在的に持っている方を見極める。それが我々の仕事です。

小笹:潜在的に持っているかどうかの見極めは、どのようにされていますか?

白野:学生時代にやったことのなかに、再現性のあるものがあるかどうかがポイントです。例えば、サークルのリーダーをやったとしたら、それはどういう経緯でなったのかが重要で、人を惹き付ける力があったのか、まとめ方が上手かったのか、先輩から指名されたのかなど、質問を積み重ねていくなかで、社会という環境に入っても再現されるのではという期待値を持って採用にあたっています。

プロフィール
トヨタ自動車株式会社 人材開発部 採用・計画室長 部長 白野 哲 氏
  • トヨタ自動車株式会社
  • 人材開発部
  • 採用・計画室長
  • 白野 哲

1960年生まれ。東北大学経済学部卒業後、トヨタ自動車(株)に入社。入社以来、一貫して国内営業に従事、その後、広告宣伝業務、人事管理業務を経て、2006年より採用・リソーセス計画業務を担当。

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役 小笹 芳央 氏
  • 株式会社リンクアンドモチベーション
  • 代表取締役社長
  • 小笹 芳央

1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員。2000年(株)リンクアンドモチベーション設立。同社代表取締役社長。

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった、私たちが職場や地域社会で働く上で必要な力のことをいいます。IT化やサービス経済化等が進む中、こうした力はますます重視されてきています。

 

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