第三回のゲストは、(株)サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏。自らの体験を通して、社会で活躍するために学生時代にやっておくべきこと、起業を目指す学生たちへのメッセージなどを語ってもらった。聞き手は、(株)リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏。
成長に欠かせないのは素直さとコミュニケーションスキル
小笹:「社会人基礎力」というテーマでお話を伺っていきたいと思いますが、専門的な知識以外で社会人にとって必要な能力について、藤田さんは何だと思われますか?
藤田:組織で働いていく上で最も重要視しているのは、コミュニケーション能力と、性格の良さ、素直さですね。すごく優秀でも、チームプレーが出来ないような人はダメですね。
小笹:最終面接では、どれくらいの学生さんと会われますか?
藤田:昨年は300人くらいに会いました。面接では、学生さんが用意していないような質問をするのですが、緊張していることを差し引いたとしても、笑顔が卑屈だったりするとダメですね(笑)。その人自身の内面に素直さがあれば、当社には経験できる環境があるので、入社後にグンと成長出来るものなんです。例えば、社内で抜擢する若手社員も、鼻息が荒くて、将来起業したいというような人材じゃなくても、素直で頑張る人だと、ポジションにつけてしまえば意外と成長していけるんですよ。
小笹:素直というのは、キーワードのようですね。
藤田:たとえ経験があっても、素直さやコミュニケーションスキルがないと、人の真似が出来なかったり、教えられたことをそのままやれないので、遠回りになって成長が遅れてしまうんですね。もちろん、自分の考え、目標を持っていることは必要ですが。
小笹:日本の伝統芸能の世界で「守破離」という教えがあるんですが、やはり基本がきちんと出来ていないと、オリジナリティが出せない。だから「守」の部分がきちんと出来るようになるには、やはり素直さが大事なんでしょうね。
経験から学ぶ姿勢が成長を加速させる
小笹:ところで、藤田さんご自身の経験の中で、自分が成長したと思える瞬間があったと思うのですが、それが最初に訪れたのはいつ頃ですか?
藤田:大学を卒業して、会社に入ってからですね。僕は、学生時代にインターンシップで、社会人、それも尊敬できる先輩を身近に感じながら営業の仕事をしていました。その経験があったから、スタート時点で同期に比べて「働く」ことへの心構えは出来ていたように思います。仕事は人材の採用企画を担当していましたが、業績を上げて社内で認められると、次第に任される仕事が増えていきました。小笹:起業するのは社会人2年目ですが、そこからグンと伸びた感覚はありましたか?
藤田:それはもう(笑)。社長というポジションになって、新しいマネジメントの仕事を始めて、上場後は上場企業の社長として経営に携わり、会社が大きくなるにつれステージが変わっていきました。たぶん就職のスタート時点では同じような人はいっぱいいたでしょうが、この10年間の経験で競争力を身につけたと思います。やっぱり、働きはじめてから何をしたかということが違いを生むと思います。
小笹:経験から学んでいくという姿勢が成長のスピードを加速させるんですね。
藤田:僕は、起業しよう!という気持ちが人一倍強かったわけではなくて、流れに身を任せたというか。ただ、当時から頭の中にずっとあったのは、すごい会社をつくることがかっこいいことに思えたんですね。若い人って、例えば、大きくてすばらしい企業に憧れるじゃないですか。でも、そういう会社に入った人が偉いんじゃなくて、そういう会社をつくった人が偉いという価値観です。だから、学生時代に「 ビジョナリー・カンパニー 」という本を読んで、そこに載っているような会社を作ろうと思いました。
起業を目指すなら、メッセージ性のあるビジネスを
小笹:最近の学生さんは自己分析が好きですが、藤田さんの学生時代はいかがでしたか?
藤田:大学で勉強していても働くことがイメージできなかったし、学生時代は就職後にどういう目標を設定したら良いのかもわからなかった。ところがインターンシップを経験して、意識は大きく変わりました。だから、今の学生さんには、自分の将来像を真剣に考えて行動してほしい。まずは自分探しじゃなくて、自分づくりから始めることが大事ですよ。
小笹:先日、学生向けの講演会があって、「起業家志望の人いるの?」と聞いたら、8割くらいの人の手が挙がったんです。起業は会社を登記すれば誰でも出来るけれども、自分の経験からすると、ビジネスそのものは社会とのコミュニケーションだと思うんです。企業が成長するためには、ファイナンスもビジネスモデルも必要だけど、最終的に重要になってくるのは人だから、人のモチベーションを成長エンジンとするような経営がいいんじゃないかという話をしました。藤田さんが、これから起業を目指す学生さんに向けて、アドバイスをするとしたら?
藤田:まず事業の立ち上げが身近に感じられるような環境に行った方がいいと思いますね。どんなに有名な大企業でも、そういう発想がない企業だと自分の力はつかないですから。そして、起業したいのなら、業界をこうしたいとか、消費者をこうしたいといった何らかのメッセージ、思いを発信していくことが大事だと思いますね。
小笹:確かにメッセージ性のある事業は継続していくし、メッセージがなくて単に儲かるからと真似をしても、継続していかない。そして社員を束ねるエネルギーも持ち得ませんしね。
藤田:ただ、起業したばかりの頃ははっきりわかっていなかったけれど、今わかることは、理想と現実のギャップですね(笑)。理想の企業イメージは今も持ち続けていますが、現実はと言えば、忍耐強く死に物狂いで頑張っています。
- 株式会社サイバーエージェント
- 代表取締役
- 藤田 晋 氏
1973年生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、(株)インテリジェンス入社。24歳の若さで(株)サイバーエージェントを設立、代表取締役社長に就任。インターネット広告で躍進し、2000年3月には史上最年少の26歳で東証マザーズに上場を果たす。
- 株式会社リンクアンドモチベーション
- 代表取締役社長
- 小笹 芳央 氏
1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員。2000年(株)リンクアンドモチベーション設立。同社代表取締役社長。
社会人基礎力とは?





