今、求められる社会人基礎力

 

NPO法人ETIC. 宮城 治男    株式会社リンクアンドモチベーション小笹 芳央 挑戦を通して自分なりの座標軸を持とう

第四回は、NPO法人ETIC. 代表理事の宮城治男氏がゲスト。リーダーを志す学生たちの起業家支援の活動を通じて、インターンシップの意義、今の学生について感じていること、学生時代をどう過ごすかについて熱く語っていただいた。聞き手は、(株)リンクアンドモチベーションの小笹芳央氏。

 

成功体験と失敗体験の繰り返しで、自分の立脚点が見つかる

小笹:まずは、宮城さんがどのような活動をされているのか、ご紹介していただけますか?

宮城:大学で起業家をめざす若者たちの勉強会という形で発足し、 当時は活躍している起業家の先輩を大学に招いて講演をしてもらっていました。ところが、単に話を聞いただけでは、若者の変化は加速しない。そこで、実際にアクションを起こせるように、インターンシップという形で半年から1年間、ベンチャー企業や実践の現場に若者を送り込んでいます。この仕事を通じて彼らが企業家精神を身につけ、リーダーシップを育んでいく機会を提供するのが事業のベースになっています。

小笹:半年から1年というのは、かなり長期間ですね。一般のインターンシップとの違いは?

宮城:就職活動のためのインターンシップではないので、最近では一部の大学と連携して、半年間のインターンシップが単位として認められ、4年で卒業できる仕組みになっています。まとまった期間、新規事業などの責任ある仕事を任されることで、成功体験と失敗体験の波をいくつか越えられるんですね。その中で、周りから評価を得たり、助けてもらう経験をするので、自他への視点の向け方が変わっていく。そこで大事にしているのは、自分の意思で挑戦する経験を通して、依存的なマインドから自分の責任で人生を切り開いていける立脚点を見つけてもらうことです。

小笹:20代前半だと自分中心に考えがちですが、それがこういった経験によって、自分は社会の中では、まだ何者でもなく、いろんな人たちとの連関の中で生きている、生かされていることを知る。そういうことを前倒しで、圧縮した濃密な時間の中で気づいてもらう機会になっているんでしょうね。

仕事のパラダイムを「自分で創る楽しいもの」に変える

小笹:宮城さんが接している学生さんは、比較的問題意識の高い、社会との接点を持とうとする人達だと思いますが、ここ数年で彼らに変化はありますか?

宮城:顕著なのは、学年を問わない動きで、大学1、2年生、場合によっては高校生もいることです。彼らは、いい大学に入ってそのまま無難に過ごせば、将来が保証されるとは思っていない。自分で生きがいを見つけて人生を切り開いていかなきゃいけないと考えています。だから、就職活動が早まったという意識で来るわけではないんですね。

小笹:ETIC.の活動に参加する前後では、学生さんたちにどんな変化がありますか?

宮城:最初に、自分のイメージだけで作り上げた社会に対する思い込みのヘッドギアがとれ、仕事は苦しいものというより、自分で創っていける楽しいものであり、人を幸せにするもの、という価値観に変わっていきます。また、価値基準を自分の中で作ることが出来るようになるので、ベンチャー企業に入る、大企業に入る、自分で事業を興すといった選択肢を並べて、自分で選ぶことが出来ます。

小笹:実際にアクションを起こして、社会での経験をすると、その後の学生時代にも大きな変化をもたらしますね。

宮城:自信が出てきて自分に可能性を見出したり、将来を見据えて大学生活を有意義に過ごせるようになるんです。例えば、就職活動で仕事を選ぶ場面でも、スタート地点から意識が違うので、会社に入ってからの自分をイメージ出来たり、入社して仕事を始めてからも愚痴を聞きません。思い通りにならなければ、自分から変えていこうという行動を起こしますから。「仕事」のパラダイムが変わってしまうといえます。

 

誰かの役にたつ、そんな本物の挑戦が人を成長させる

小笹:ここ数年、求人倍率でいえばバブル期に迫る1.89倍と好況で、就職活動のシーンでは学生がかなり優位になってきています。自分なりの座標軸をもつ、自分の選択次第という考え方ではなく、安易に人気企業に入ろうという傾向が出始めています。そういう時代に警鐘を鳴らすとしたら?

宮城:一人の人間としてどういう人生を歩んでいくか、座標軸を早いうちに育んでいかないと周りに簡単に流されてしまいます。そのためにも社会に飛びこんで、リアリティのあるアクションを早い段階で起こしてほしいですね。インターンシップはその手段の一つ。プロジェクト単位でインターンシップをしているので、結果が成功なのか、失敗なのかが見えてきて、周りもそれに対して評価をしてくれる。こうしたリアルな社会の反応を得ると、視野が広がって、見通せるものが多くなっていくんです。

小笹:バブル期以前は、年功序列、生涯一企業で働くという考え方もまだ根強く残っていましたが、実力主義の今は、自らの力で人生を切り開いていかなくてはいけない。そうすると学力だけでは足りなくて、社会で求められる力、社会人基礎力が必要なんですね。

宮城:今、ETIC.では、人材育成を通して地域を活性化させ、地方の若者も活躍できる場をつくる活動を全国20ヶ所で行っています。その中で、田舎の素朴な大学生たちの伸びが目立ちます。高校時代はのんびり過ごしていたような地方の大学生でも、小さくても挑戦のステップを踏んでいくと、そのプロセスで得た経験がバネになって、成長の軌道に乗っていける。だから、まずはたとえば自分が行動を起こすことで身近な誰かが喜んでくれる、そんな自分ができるところから始めてほしい。自ら動くことで社会と自分との接点を確認し、社会や自分を知っていくプロセスとしてほしいですね。

 

プロフィール
NPO法人ETIC. 代表理事 宮城 治男 氏
  • NPO法人ETIC.
  • 代表理事
  • 宮城 治男

1972年生まれ。早稲田大学卒業。大学在学中の1993年に学生起業家の全国ネットワークとして「ETIC.」を創設。社会的な課題に挑む「社会起業家」の創業支援、学生のキャリアデザイン支援の他、地域・大学等のキャリア教育コンサルティングを手がける。

株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役 小笹 芳央 氏
  • 株式会社リンクアンドモチベーション
  • 代表取締役社長
  • 小笹 芳央

1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、(株)リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員。2000年(株)リンクアンドモチベーション設立。同社代表取締役社長。

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった、私たちが職場や地域社会で働く上で必要な力のことをいいます。IT化やサービス経済化等が進む中、こうした力はますます重視されてきています。

 

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