立教大学では、大学と社会を連携させる“コオプ教育”を導入している。社会人と学生が一緒に参加し、異年齢と関わりながら、キャリアデザインについて考える。就職や仕事だけでなく、自分の人生を構築するという本質的なテーマに、多くの反響が集まっている。同大学大学院ビジネスデザイン研究科、准教授の小島貴子氏にお話を伺った。
社会的に役に立つこと
小島氏は、14年間、公務員として職業訓練に関わってきた。就職支援に取り組みながら「会社を選ぶことと、仕事を選ぶことは違う」ということを痛感した。3年前に退職し、働く意味が問われる今、立教大学でキャリアデザインを提唱している。
「今の若者は、生まれた時から何でも手に入る、恵まれた環境で育っています。そのため、今は欲しいものが目に見えず、“探すもの”がよくわからない状態ではないでしょうか。また、都内の大学には首都圏の出身者が大半を占めるなど、多数の人は限られた地域で生活して、視野が狭くなってきていると感じます」
大学と社会をつなげる“コオプ教育”では、“キャリアワークショップ”を実施している。そこでは学生だけでなく、“メンター”と呼ばれる社会人3年目の人たちが参加して、ガイダンスの後、ディスカッションをする。
「参加する社会人と学生は、年齢が近いため、親近感を持って接することができます。学生は身近な未来像に触れることによって、社会で役立つとはどういうことかが見えてきます。ある社会人から、ワークショップの晩は頭の中で電光が走ってなかなか寝つけなかったと聞きました(笑)。社会人にとっても、仕事では接することの少ない、利害のない人間関係ができ、お互い刺激になっているようです」
人生という出口を目指して
授業では入学したばかりの大学1年生に、“人生時計”を見せ、自分の時間をどう使うか、4年間という時間の概念を考えさせるのだという。
「今、この時が過去と未来で成り立っています。どのような過去だったかで、未来のために今すべきことがわかります。25年前、私は専業主婦で、今の自分は全く想像できませんでした。流される人生と創り上げる人生は違いますよ」
同大学では、各学部に合ったキャリア教育も進んでいる。多くの考える機会を与え、広い視野で働くことを考えさせる。
「学生に、障がい者の人から税金を取るべきかどうかを尋ねると、かわいそうという答えがでてきます。でも、障がい者の人が納税できるくらいの世の中になるべきだと思いませんか?個人の資質が生かせるようになったら、社会はもっと変わりますよ。どういうことをやりたいかで就職先を探すこと。そうすることで、自分がなぜ内定をうけたのか、どのように生きていけるかがわかってきます」
学んだことは、疑え
最近、入社3年以内の離職者が後を絶たない。そんな状況に、小島氏は警鐘を鳴らす。
「能力を身につけたかったら、継続するしかないです。反復していると、ふと気がついた時に必ずできるようになっています。成果主義ではなくプロセス主義で、過程が大事です。目的を作ると、プロセスが手段になってしまいます。緩やかな目標を持って、前向きに続けることが大事です」
また、小島氏は、大学生のうちから、emotion(感じる力)を身につけ、その上で、その時々に応じて、自分が身につけたカードを切れる人間になって欲しいと語る。
「カードは、自分が欲しい能力のある人から習得すればいいのです。どうしてこの人は、自分にできないことができるのか。まねをしているうちに身につきます。そうやって、挑戦的な職業人になることを願っています」
- 立教大学
- ビジネスデザイン研究科
- 准教授
- コオプ教育 コーディネーター
- 小島 貴子 氏
1958年生まれ。埼玉県庁に職業訓練指導員として入庁。職業訓練生の就職支援を行い、7年連続で就職率100%を達成した。その後、立教大学で「コオプ・コーディネーター」に就任。現在は同大学大学院ビジネスデザイン研究科の准教授を務める。厚生労働省による、若者の人間力を高める国民運動実行委員、秩父市政策アドバイザーとしても活躍し、多くの書籍を執筆している。『就職迷子の若者たち』(2006年、集英社新書)、『働く女の転機予報』(2006年、幻冬舎)他。
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