今、求められる社会人基礎力

 

自己管理からすべてが始まる

「百ます計算」を筆頭に、「基礎的な生活習慣を身につけさせること」と「反復練習」を徹底した教育方針で、子供達の基礎学力の向上に成果を上げる陰山英男氏。陰山氏に指導を受けた小学校の卒業生が、類を見ない高い割合で国立大学へ進学を決めた事から、その教育方針は「陰山メソッド」として注目されてきた。そんな陰山氏に若者が社会に出るにあたって必要な力について語っていただいた。

 

自己管理のバランスが悪いように感じる

子供達の学力低下や不登校、若者の鬱病など、最大の原因は生活習慣の乱れにあると陰山氏は指摘する。

「社会を生き抜くうえで重要なことは健康にほかなりません。ただ病気じゃないということではなく、元気があるかどうか。成功している人達が、必ず偏差値の高い大学を出ているかといえばそうではない。でも、成功している人は元気だと思いませんか?今にも吠え出しそうなパワーがあるでしょ(笑)」

では何故、成功者は元気なのか?

「元気ということは、睡眠や食事などの生活習慣がしっかりしているということ。簡単に言うと自立できているということです。社会では必ず自立が求められます。自分で考え自分で取り組む、社会人基礎力にある“前に踏み出す力”が必要となります。特に現代社会においては、健康、時間、情報、この3つをコントロールすることが、“前に踏み出す力”を生み出す原動力になります。なのに、今の若者はそのバランスが非常に悪いように感じます」

 

若者達に必要なのは現実を直視すること

若者が自立できない一つの要因として、教育のあり方に対しても苦言を呈している。
 「日本の教育はいたれりつくせりです。親や先生に言われるがまま。自主的な方向性のもとに何かをやっていく経験が乏しい。だから、会社に入って壁にぶつかった時に簡単に辞めてしまう。でも、考えてみて下さい。社会に出ていい環境が用意されているはずがない。うまくいかないのが普通なのに、それを学校では教えていないんです」
 さらに、ゆとり教育に伴う必修科目の縮小化も、自立の減速に拍車をかけていると言う。
 「今の学校では都道府県の名前すら全て教えていない。そのため、コンビニで働いても地理がわからなくて、荷物の出荷に戸惑ってしまう。現在の教育では、社会に出て自立するためには欠陥がある。だから大人達は、はっきりと言わないといけない。あなた達は、あまりいい教育を受けていない。だから頑張りなさいって。そして若者達には、その現実を直視してほしい」

 

前に踏み出すためには健康でいることが大事

若者には非情かも知れないが、いつの時代でも現実を直視できる人間が一番強いと陰山氏は言う。

「だからと言って教育が悪いとか開き直らず、ありのままを知り立ち向かってほしい。ベンツに乗る人もいれば、ブルーシートで日々の生活を暮らす人もいる。でも、後者が怠けた訳ではないと思う。努力してもそうなる事があるのだから、若い頃からいい加減なことをしていたら本当に先が怖い。世の中、自分の思っている職業につけないのが当たり前。個性に合わせて仕事があるのでなく、仕事に合わせて個性をつくらないといけない。そのためにはとにかく我慢。人が真似できない苦しさを我慢できたら、人が真似できない自分が誕生する。私は人生で流す涙の量は決まっていると思う。先に流すか後に流すかの問題だけ。ただ、後で流す涙はしょっぱいよ(笑)。だから、若くて時間があるうちに“前に踏み出す力”を蓄えて苦難に立ち向かってほしい。そのためには健康でいること。睡眠と食事をしっかりとって己を管理すること。まずは、そこから始めてください」

 

プロフィール
小島貴子
  • 立命館大学
  • 大学教育開発・
  • 支援センター教授
  • 陰山 英男

1958年生まれ。岡山大学法学部卒。兵庫県尼崎市立園和小学校を経て、1989年、兵庫県朝来郡朝来町立山口小学校に赴任。「読み書き計算」「早寝、早起き、朝御飯」を柱にした「陰山メソッド」を確立。2003年4月尾道市立土堂小学校校長就任。2006年4月から立命館大学 大学教育開発・支援センター教授(立命館小学校副校長兼任)に。文部科学省・中央教育審議会 特別委員。内閣官房「教育再生会議」有識者委員。

「陰山手帳2008」
(ダイヤモンド社)

 

社会人基礎力とは?

社会人基礎力とは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」といった、私たちが職場や地域社会で働く上で必要な力のことをいいます。IT化やサービス経済化等が進む中、こうした力はますます重視されてきています。

百ます計算とは?

縦10×横10の合計100マスのシートの左と上に数字をランダムに並べ、それぞれが交差するマスに指定の計算方法(たし算、かけ算など)の答えを記入する計算トレーニング。1965年代頃に、小学校教師の岸本裕史氏が担当するクラスの児童の発想により生まれたものとされ、陰山氏が授業に採用。子供の集中力と自信の向上に効果が高いとして脚光を浴びる。

 

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