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羽生善治 勝負は希望と絶望の繰り返し、そこから“勝ち”の意味を見い出すことが大事

つねに将棋界のトップを走り続ける棋士羽生善治氏。25歳で前人未踏の7タイトル全制覇を達成、37歳になった今も、新たな境地で将棋に挑んでいる。羽生氏が考える、プロフェッショナルとは何かについてお話を伺った。

 

仕事をしているという意識はなかった中学時代

「将棋を始めたのは小学校1年生の時。当時は、野球やサッカーなどと同じ遊びの一つでした。小学校5年生で二上師匠に入門したんですが、当時は、好きな将棋を続けられたらいいな、という程度で、将来のこと、その先の進路のことなど何も考えていなかったですね」

 プロ棋士になるためには、10代で奨励会というプロの養成機関に入会し、26歳の誕生日までに四段にならなければならない。しかし、当時の羽生少年は、学校以外の遊び場の一つとして道場があるくらいにしか思っていなかった。ところが、奨励会入会後、メキメキとその才気を発揮、弱冠15歳で四段に昇格。プロ棋士としての一歩を踏み出した。
 「だから僕は中学生から社会人なんです。今どき珍しい勤労中学生(笑)。対局があれば学校を休んで、地方へ出張にも行っていました。でも、あの頃はまだ、仕事をしているという意識はなかったですね」

 

客観的に冷静に立ち位置を確認する

職業として棋士を選んだという意識はなかったが、羽生さんは対局を重ねるにつれ、遊びとは違う厳しさを感じ、代替が効かないという現実のなかから、次第にプロとしての気持ちが芽生え、熟成されてきたと言う。そして25歳のとき、前人未到の7タイトル全制覇を達成。以来、天才の名を欲しいままにしてきた。

 「37歳となった今、10代20代の頃と比べ、記憶力や反射神経は衰えてきていますが、経験値の中で培ってきた『勝負の勘』があります。どんなに厳しい局面であっても、客観的に冷静に立ち位置を確認する。仕事では、それをつねに意識しています」
 年間およそ80タイトル。一局が3泊4日という長丁場に及ぶことも。すべての対局にベストコンディションで臨むことが理想だが、当然、体調が思わしくないときもある。
 「例えば勝てない時、それをスランプと思ってしまうのか、それとも次の飛躍のためのステップ期間と捉えるのかでも違います。僕の場合は、まず気分を変えてみます。将棋から離れて、旅行に行ったり。そういう時間が実は案外、大事だったりするんですね」

 

経験を通して加減を学んでいってほしい

 講演会などを通じて大学生と接することもあるという羽生氏だが、いまどきの大学生について、どう感じているのだろう。
 「見た目は僕たちの時代とは変わったけれども、精神的な部分ではあまり変わってないですね。学生時代は学び、吸収する時代。社会人になってしまうと時間的制約ができてしまうから、今ある時間を無駄に使って、いろんな経験を通して、加減を学んでいってほしいですね」
 羽生氏にとっても、対局以外の時間をどう過ごすか、時間の使い方がいちばん重要だと話す。つねに自分との葛藤に打ち勝つべく、プレッシャーと戦いながら、勝負に挑む。そんな羽生さんがプロ棋士として、つねに心がけていることがある。
 「将棋の世界では、三段から四段に昇格することが非常に難しいと言われています。一戦一戦がまさに希望と絶望の繰り返しで、死に物狂いで戦わなければならない。プロフェッショナルである限り、勝負に立ち向かったとき、“勝ち”の意味をどう感じるか、そこが大切なんです」

 

プロフィール

将棋棋士 羽生 善治氏将棋棋士
羽生 善治

1970年生まれ。二上達也九段門下。1989年初タイトルとなる竜王を獲得。1996年にはタイトル七冠を独占。現在、永世棋聖・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世王将の称号を獲得。

 

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