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平尾 公彦 新たな人生の始まりの時。大いに悩んで、そこで何かを得てほしい

創立130年を迎え、世界と時代に知的価値を創造し続ける、東京大学。
副学長を務める平尾公彦氏に、日本の最高峰にある教育現場から、学生時代の過ごし方や仕事に対する心構えを語っていただいた。

 

自分の“顔”をつくる時

学生に負けないほど研究に対して情熱を持つ平尾氏。日ごろ学生に接しながら、伝えていることがある。
 「20歳前後は、非常に重要な時期。それまで受験勉強に追われて、自分の価値観にベールをかぶせて生きていたかもしれません。大学生になった今こそ、ぜひ自分自身を解放し、自分という個性を形成してほしい」
 東京大学では、世の中に様々な職業の分野があることを学生に知ってもらうために、OB・OGを招き、世代を越えて議論を行う場を設けるようにした。
 「大学ではほとんど毎日何かしらイベントやセミナーが行われています。できるだけ長い時間をキャンパス内で過ごし、いろいろな人と意見交換をすることを勧めます。私が学生の時は、寮の先輩たちと語り明かしました。今の学生も本質的には変わっていないと思います。多くの人とふれあって、知性だけでなく同時に感性も磨いてください」

 

世界を担うアジテーション

平尾氏は、国際交流として海外の学生とも会う機会が多い。積極的な彼らを見ながら、日本の学生に対して少々懸念している。
 「なかでも、中国とインドの学生は非常に熱心に勉強し、強烈なハングリー精神を持っています。相対的に見ると、日本の学生は貪欲さが足りない気がします。中国やインドは、これから大きく発展する可能性のある国です。2015年には、中国が日本のGDPを抜くと言われていますよね。アメリカと中国に挟まれた日本は、学問や科学技術を駆使してイノベーションを起すというソフトパワーによって生きていかざるを得ないと思います」
 これからの未来を創る学生だからこそ、大学は徹底的に基礎を教えるべきと平尾氏は強調する。
 「時代は激しく変化しています。学生が社会で活躍する10年先でも通用するものを学ばせなくてはいけません。よりファンダメンタルなことを深く理解させる、深い理解には汎用性があります」

 

“今”を真剣に生きること

「大学生の年齢で将来を決めることは、大変難しいはずです。自分にどのような仕事が合っているのか、自分の能力がどこで活かされるか、わからないですよね。学生という貴重な時間を大事にしながら、真面目に自分自身と向き合ってたくさん悩んでください」
 就職活動が徐々に早まっていることを危惧する平尾氏。もう少し“学生”らしい生活に専念できる時間を与えてほしいという。
 「現在、学生として試験に追われているかと思います。社会に出ても、毎日が試験の連続になります。大学では合格点が明確でしたが、社会で受ける試験の合格点は誰にもわからないのです。わからないからこそ、誠実に能力を発揮することが大切です。まずは、与えられた仕事を誠心誠意こなすこと。その中で自分の立つ位置を確立すればいいのです。働くことが、すべてではありません。あくまで、仕事は人生の一部です。居心地が悪ければより良い場所を求めて、自分のやりたいことを追求してください」

 

プロフィール

平尾 公彦氏東京大学 副学長
平尾 公彦

1945年生まれ。京都大学工学部卒業。ノーベル化学賞を受賞した福井謙一教授を師事。卒業後も研究を続け、大学院に進学し、カナダへ留学。1988年、名古屋大学教授に就任した後、1993年に東京大学に異動し、現在は同大学副学長を務める。理論化学・量子化学を研究分野とし、その温厚な人柄から研究室もバドミントン大会で優勝するなど和気あいあいとしたムードに包まれている。

 

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